桜の良さ、梅の良さ

東風吹かば にほひをこせよ 梅の花、主なしとて春を忘るな

という和歌が思い出されます。菅原道真の代表的な梅の歌です。日本人は梅より桜を愛でる方が多く、お花見といえば桜の満開の時期を予定するかと思います。ではなぜ日本人は桜が好きなのか、、、それは桜の花の儚さにあると言われています。桜は咲いて数日で散ってしまいます。特に桜が咲く頃は雨が降ったり、風が吹く時期でもあるので、散り際を嗜む人も少なくないと思います。それに比べ、梅の花は桜の花に比べ強く、もう少し長く咲いているそうです。

また、桜に比べ、梅の香は強く遠くからでも初春を感じさせてくれる香りです。先月、山梨県甲斐市にある「梅の里」へ行ってきました。梅花は満開で、彩り鮮やかに咲いていました。ほぼゆったりと時間を過ごしている年配の方が散歩しながら観賞していました。そんな折、上の歌を思い出しました。

簡単にこの和歌の説明をしますと、、、

菅原道真は幼少より神童と呼ばれるほど、文武で名を馳せ、低い身分の家だったにもかかわらず出世を成し遂げ右大臣となります。しかし左大臣の藤原時平の政略により冤罪で大宰府に左遷させられます。その際家族との別れも十分にできないまま京都を離れる際に詠った和歌が上の歌でした。

「東風(春に吹く少し寒さの混じった風)が吹いたら、香りを風にのせて大宰府まで送り届けてくれ梅の花よ。私(主)がいないからといって春を忘れてはならないよ」と庭先の梅に語りかけているようです。

この和歌から大宰府では厳しい生活を強いられつつも皇室や国の平安を誠実に祈っていた様子が伺えます。菅原道真の誠実な人間性を詠っているように感じます。

 

話は戻りますが、私が訪れた時「梅の里」の梅園では春霞が赤や白の梅にかかり幻想的な情景を作り出していました。また、オオイヌノフグリやホトケノザが咲いて春を足元からも演出してくれていました。

あまり目立つこともなく、凛として咲く梅の花に心を奪われた瞬間、きっと菅原道真の姿に重なったのかもしれません。ひっそりとお花見をしてみるのも心和む時間を作れるのではないでしょうか。